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インタビュー

Special Interview

グレイシャア亜紀
『最初にグローブを付けて、ミットを叩いたときからキックの面白さにハマったんです』

女子キックボクシング界を代表する実力者、グレイシャア亜紀。
彼女がキックに出会ったきっかけ、そして続けている理由とは、いったい何だったのか?
(インタビュー・佐々木亜希)

--グレイシャアさんは、キックをはじめてもうどのくらいになるんですか?
グレイシャア:「そうですねぇ……6年目になりますかね」

--6年目! 今更聞くのも何ですけど、キックをはじめたのはどういうきっかけだったんですか?
グレイシャア:「はじめたきっかけは、私、身長が155cmで、体重が60kgぐらいあった時期があって。アンパンマンみたいで(笑)。さすがにヤバイなって思って、ダイエットしようっていうのがきっかけです」

--当時は何をされていた頃ですか?
グレイシャア:「当時は普通に仕事してて、休みの日は夏であったら海にサーフィンしにいって、冬であれば山にスノーボードとかで遊びにいって、美味しいものを食べて、という繰り返しをしていたので。まぁでも、週1でしか動く時間がなかったので。気づいたらどんどんいらない肉がついてたと」

--今の話を聞く限り、アウトドア派ではあったみたいですね。
グレイシャア:「ですね。家にはいなかったです」

--学生の頃は部活をやっていたりしたんですか?
グレイシャア:「中学・高校は陸上部で、七種競技をやっていましたね。混成競技なんですけど、中学では三種、高校で七種。2日間にかけて七種の記録を争うんです。記録が点数に変わって、その合計点数を争う競技なんですけど」

--キツそうですねぇ。
グレイシャア:「そうですね。自分、身長がないんで、うん。跳躍系のものとかは、キツかったですね。いま思えば」

--中、高と続けていたということは、陸上にやりがいのようなものは感じていたんでしょうか。
グレイシャア:「やっぱりなんか、こうしてキックやってるのもそうだと思うんですけど、自分と向き合えるというのもすごくあるし。努力し続けることが……言葉で簡単に言うのもどうかと思うんですけど、団体競技ではないので、個人競技の分、自分に全責任がかかるっていう、いい経験をしてきたなと思いますね」

--卒業してからは、日常的な運動はしていなかったんですか?
グレイシャア:「あとは、週1で社会人バスケに顔を出してやってたくらいですかね」

--部活動がなくなったにしても、普通の人よりは、かなり身体を動かしてた生活ではあったみたいですけど、それでも太ってしまったというのは……
グレイシャア:「やっぱり、食べる生活習慣を変えることが出来なくて(笑)。たまるにたまってしまった感じですね」

--では、体型に危機感を覚えて、身体を動かす場所を探したのがキックとの出会いですか?
グレイシャア:「最初はタウンページでボクシングジムを探したんですよ。そしたらその下のほうに『キックボクシングジム』って書いてあるのを見つけて。パンチだけよりも、足も一緒に動かしたほうが早く痩せられるのかなぁ、と単純に考えたのが、きっかけですね」

--やってみて、どうでした?
グレイシャア:「いやぁ、面白かった! ハマりましたね。最初にグローブつけて、ミットをパンパン!って叩いた時から、面白いなと思いましたね」

--めちゃくちゃハマるのが早いですね(笑)。
グレイシャア:「すごい面白かったですね。女の人って、ものを叩いたりすることが少ないじゃないですか。思いっきり叩いて、こんなに気持ちがすっきりするスポーツってないなぁって思ったのが、すごい印象的でしたね」

--人を殴るっていう行為が、まず無いですよね。
グレイシャア:「無いですよね。蹴りも無いですよね。冗談半分で人をこづいたり、このやろ~なんて言って軽く蹴ったり、そういうことはあるかもしれないですけど、まず無いことですよね。あと、はじめた当時は人を蹴る、殴るっていうことより、思いっきり自分を発散させられる場所だったのかなっていうのが、ありますね」

--体重はすぐに落ちました?
グレイシャア:「そうですね。ほとんど部活感覚で行ってたんですよ。だから仕事が終わって、ほぼ毎日。なわとびだけでもいいから跳びに行こうかなとか。どうせ毎月月謝を払うんだから、毎日行っても別に文句は言われないし。自分の好き勝手に動いていいから、とにかく習慣にしちゃおうと。なわとびをとにかく最初に30分、最初は連続して飛ぶことが出来なかったから、タイマーにあわせて3分飛んで、1分ストレッチして、って感じでやって、ちょっとずつ休む間隔を減らしていったりとか。あとは腹筋とか腕立てとかを、サーキット的にやっていったら、やっぱり身体が変わっていきましたね

--それだけやれば、はっきり出てきますよね。
グレイシャア:「出ましたね。ジムって鏡張りじゃないですか。だからなるべく、露出の多い服を着て(笑)。自分に『この肉、ヤバいな』って思わせるようにしてやっていったら、結構すっと変わっていきましたね」

--最初はダイエットが目的でも、体重が落ちた後も、続けてジムには通っていたわけですよね。
グレイシャア:「うん。だんだん身体が変わってくると、逆にエネルギーみたいなものが出てきたんですよ。体つきが変わって来た頃に、同じジムでプロテストを受ける男の子たちが多かったんで、よし、やっちゃおうかなって。資格だけ持っていてもいいかなと。そしたら、余計にハマりましたね」

--先ほど、練習が面白かったとおっしゃっていましたけど、試合も楽しかったという感じでしたか?
グレイシャア:「楽しいっていうより、何だろう。自分より……強い人がいるっていうことのほうが、頭の中を支配していた感じですよね」

--自分より強い人と、どんどん戦いたいと。
グレイシャア:「そういうほうが強かったですね。やっぱり、そんなにアマチュアでやっていたわけでもないんで、日本にどんな強い選手がいるんだろうってことばっかりでしたね。頭の中は。あとは、強い選手って、絶対どこかには居るんだって気持ちがあったのと、女子でも、頑張って練習すればここまで出来るんだってところを見せたいというのは、ありましたね」

--試合が少なくて、モチベーションの維持がきつい時もあったんじゃないですか?
グレイシャア:「そうですね。男子の大会の中に入れてもらうこともあったんですけど、やっぱり女子なんだなーって見られてしまうのが、自分の中では面白くないというのはありましたね」

--それは、レベルとしてですか? それとも評価としてですか?
グレイシャア:「どっちもですかね。どっちも伴ってないと、お客さんにはいい評価をいただけないと思うんで。レベルがあるから評価してもらえる、というのもあるんで。……結構、いろんなこと考えてましたね(笑)」

--単純に、女子だと大会の規模はけして大きくないけど、男子だと数戦したら後楽園で試合が出来るという面もありますよね。
グレイシャア:「あぁ、だから女子だからっていう……今現在、女子キックっていう形ですすめてもらっているんですけど、でもやっぱり自分の中では、女子だけど、男子だけどじゃなくて、やってる土俵はみんな同じで、スタートラインは同じところを踏んでいるんで、同じように見て欲しいというか……言葉にすると難しいなぁ……男子だから、女子だから、じゃなくて、いちキック」

--いちキックボクサーとして、見て欲しいと。
グレイシャア:「そうですね。でも、どうなんでしょうね。いま、女子キックボクサーって増えましたけど、女子だからって見られるのはイヤな選手も居るんじゃないかなぁって個人的には思うんですけどね。逆に、女子だからってそういう言葉で、うまく道を切り開いてもらってるところもあると思うんで、そこは難しいですね。うーん」

--それは多分、そのまま女の人が仕事していく上でとかそういう話にもつながると思いますけどね。
グレイシャア:「うん、そうなんですよ(笑)。だからね、難しいんですけどね。うん」

--逆に、女子だから試合の機会に恵まれるという面もあるでしょうし。
グレイシャア:「そうですね。だから、いいところと難しいところと」

--6年やってきても、そのジレンマはあるんですね。
グレイシャア:「いやー、いつもありますよ。簡単にやっていけるものじゃない部分もあるし、選手はいろんなもの犠牲にしてるし。そういうことを考えると、もっと世間に広めていかなきゃいけないなあって感じです」

--J-GIRLSがスタートした時、それまでのキャリアは別に横一線からスタートする感じになったことに、不満はなかったですか。
グレイシャア:「それは全くないですね。不満とか言うよりは、なんだろう。逆に、また出来るっていうほうが強かったので。また試合が出来るっていう、そっちのほうが強かったかな」

--なるほど。
グレイシャア:「もっといろんな人の試合も見られる、とか。女子でもいろんな試合が見られるし、いろんな戦いが出来るし。日本のレベルっていうのを証明できる場にもなってきたと思うんで、今となれば。だからそれは、すごくいいほうに考えてましたね」

--だとしたら、順調に充実した格闘技人生を送れているという感じでしょうか(笑)。
「うーん。そうですねぇ(笑)。なんだろうなぁ、やっぱり楽しいんでしょうね、やってて。試合となればモチベーション上げたりするのは本当に大変なんですけど、仲間がいて、サポートしてくれる人がいて。ひとりでは出来ない競技という面があるので」

--個人競技ですけど、やっぱり一人では出来ないものだと感じますか。
グレイシャア:「うん、個人競技ですけど、やっぱりサンドバック叩いてるだけじゃ強くなれないんで。人の身体を犠牲にしてるわけですし。自分も殴るし蹴るし、殴られるし、蹴られるしっていうことをやっている以上、やっぱり一人では出来ない競技なんですよ。そういう意味では、有り難いっていうのかな。周りのサポートしてくれる人には感謝だし、うまくなる、強くなるっていうのが、発見があって面白いし。それが楽しいんだと思います」

--やってる中で、つらいこととか、もういいかなって思うタイミングが、無かったって言ったらウソになるんじゃないかと思うんですよ。
グレイシャア:「ありますね(笑)。はい。いっぱいありますね」

--それでもやっぱり続けてきたっていうのは……
グレイシャア:「なんだろう。なんだろうなぁ……。なんだろうなぁ……。例えば、試合で負けて、もうダメだなって思ったのが少ないんだろうと思います。負けた中でも、良かったところを言ってくれる人がいたりとか、そういう言葉をかけてもらえたことが、良かったのかなぁ……」

--負けても「もう出し切った。もうやりたくない」って思うよりも、「あれが出来なかったから負けた」という後悔があると、多分心残りは生まれますよね。
グレイシャア:「あぁ、そうですね。間違いなくそうです。でも、試合前に体調を万全に持っていくっていうのは本当に難しくて、みんな勝つためにやっていますけど、リングに上がって向かい合ったときに、その時『あっ』って思うことって、けっこうあるんで。やってみないと分からないってことはあるんですよ」

--陳腐な例えになりますけど、それは普段の生活で出かけた後に「あれを忘れた」って気づくようなものでしょうか。
グレイシャア:「あぁ、そうそう。『あれ持ってきたはずなんだけど』って。分かりやすく言うと、そういう感じかもしれない(笑)。でも、忘れたけどなんとかなるよって、まわりの人に気づかせてもらえることのほうがあるんで。そういうことが自分は恵まれているのかなぁって思います」

--それがあるから辞められないと。
グレイシャア:「でも、やめようと思えば辞めますけど(笑)。でも、選手を辞めたとしても別の道はあるんで。辞めたとしても、関わっていくつもりはありますけどね」

--前に総合格闘家の女性に話を聞いたとき、格闘技をはじめて唯一後悔しているのは、肩幅が大きくなってTシャツが着られなくなることだと聞いたことがあるんですよ。
グレイシャア:「ハハハ(笑)。それはねぇ(笑)。どうしようって思って。冬はまだ、誤魔化せるんですけどねぇ」

--グレイシャアさんは、まぁそういった面以外は(笑)やってきて後悔したことはないですか。
グレイシャア:「後悔したことは無いかなぁ。なんか、始めてデビューして、何戦かしてからは、女子キックの世界の中に自分の“グレイシャア亜紀"っていう名を刻みたいというか。歴史の中に、名を残せたらなあって思っていたんですけど、今となれば、初対面の人が『あ、グレイシャアさん!』って言ってきてくれたりすることが、嬉しいし。『スカパー!見ました!』とか『youtube見ました!』とか言われたら、すごく嬉しいし」

--もう名を刻んでいる今となっては、刻んである名をより深く、濃くしていくっていう目的に自然となっていきますよね。
グレイシャア:「うん、そうですね。より深く、濃く」

--次はいよいよ、ベルトをもう一回取りにいく試合になりますけど、気持ちとして『あのベルトは私のもとになきゃ』と思ったりはしませんか?
グレイシャア:「まぁ、あったらあったに越したことはないですけどね(笑)。向こうもそう思っているでしょうからねぇ。でも、あったらまた、頑張らないといけないし(笑)。まぁでも、応援してくれるみんなの期待にはなるべく応えたいと思います。なるべく当日は自分のことに集中してやりたいと思っているんで」

--応援する側からしたら、ベルトを獲ってもらうことで、よく頑張ったねって言うことが出来るというのはあると思うんですね。
グレイシャア:「あぁ、そうかもしれないですね……。自分としても、ベルトを獲ってからは、ちょっとエバってもいいかなとか(笑)。持ってるからこそ言えることって、いっぱいありますからね。逆に、下からの意見も言えるような王者になりたいですよね。そういうの大事かな、女子キックを変えていくっていう意味では。やっぱりチャンピオンはいろいろ発言権があると思うし」

--チャンピオンが誰かというのも、その階級の盛り上がりを左右しますしね。
グレイシャア:「そうですよね。王者になったら、やっぱりその階級を活性化する人になれたらいいと思いますね」

--これまた今さらな質問なんですけど、グレイシャア亜紀というリングネームの由来を教えてください。
グレイシャア:「由来はですね、友達にいくつか出してもらって、そこから絞っていって決めました。名前の字画を鑑定してくれる人に見て貰って。最終的にグレイシャアともう1つ、何だったか忘れましたけど、2つくらいまで絞って」

--あ、そんなにきちんと決めていたんですね。
グレイシャア:「はい。どうせ付けるんだったら、インパクトがあって印象付けられるものにしたいというのもあったんで。あとは、グレイシャアっていうのは、グレイスって言う言葉からの造語らしいんですけど、華麗な、とか、優雅なという意味合いがあるというのは聞いてます」

--亜紀さん、のほうは本名なんですよね。
グレイシャア:「そうです」

--いま、リングネーム付けてる選手は少ないですよね。
グレイシャア:「そうですね。最初はAKIだけでやっていたんですけど、ウィンディ選手とか、かっこいいなぁって(笑)。憧れもあって。いつかそういう選手になりたいなぁって。インパクトのある名前のほうが覚えてもらえるんだろうなと思いましたし」

--リングに上がるときはグレイシャア亜紀になる、みたいな気持ちの切り替えがあったりしますか?
グレイシャア:「んー、というか、リング以外のときも、キックやってるときはだいたい“グレイシャア亜紀"ですよね。実家に帰ったときとか、仕事に行ってるときくらいですね、本名の自分に戻るのは」

--あ、そうですよね。リングネームをつけて良かったと思いますか?
グレイシャア:「うん、思う。それはすごく思いますね。本名じゃないけど、女子キックの歴史に名前を刻みたいっていう気持ちはあったから。普通の名前で、記憶に薄れていっちゃうのもイヤだなと思っていたから、つけて良かったなって。あとは本名だとプライバシー的なこともあるんで、そういう部分では良かったのかなぁ。キックやってるときはグレイシャア亜紀でいられるというような、メリハリがあるのはいいのかなって思いますね」

--逆に、これからデビューする人はそこも考えたら面白いかもしれないですね。
グレイシャア:「うん、面白いと思いますよ。自分をアピールできるものでもあると思うんで。ニュアンスとかで、どんな選手なのかなって想像も出来たりするじゃないですか。それも面白いと思いますしね」

--では、もうタイトルマッチ直前ですけど、まずは行かない、行けないという人にメッセージをお願いします。
グレイシャア:「来れない人には……あー、もうホント残念、かわいそう! って感じですね。後悔しますよ。そういう試合が、いっぱいあると思います」

--では、もう行くよという人へ。
グレイシャア:「そうですね。……なにかが起きるでしょう(笑)。なにかが起きることを期待してください。選手もそれは分からない(笑)! 来ない人は、あぁホント可哀想、って感じです」

--分かりました(笑)。ベルトを獲った後のグレイシャア亜紀がどう活躍していくかについても、期待してます。
グレイシャア:「もちろん、王者になったらその先のことも考えて活動していきたいですね。まずはとにかく、いい試合をして盛り上げられるよう、頑張りたいと思います」

--最後にダメ押しみたいですが、まだ、行くかどうするか迷っている人がいたら、なんて言いますか?
グレイシャア:「そうだなぁ……一回は、見て欲しいですね。一回でいいから、記憶に残しておいて欲しいというのはあるかな。なんか、チャンスがあって、また見に来れる機会があったときに『えっ!!』って驚かせることが出来たら、それは成長があったんだと思うし。女子のレベルを評価してもらえると思うんで。

--少しでも引っかかっていて欲しいですね。
グレイシャア:「うん。なんか、そういえばって感覚でもいいんで。女子キックって、どっかで見たなとか。なにかの時に、思い出してもらえたらいいなと思いますね」

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